『幻夏』感想|『犯罪者』以上に重く、救われない人生が胸に残る

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太田愛さんの『幻夏』を読みました。『犯罪者』に続いての読書です。

面白かった。めちゃくちゃ面白かったんだけど……すごく重かったです。

冤罪や司法の問題が大きなテーマになっている作品で、そのために人生を狂わされてしまった家族が、あまりにも切なくて。読み終わっても、すぐには気持ちを切り替えられないような重さが残りました。

『犯罪者』も重い話ではあったけど、私にはこちらのほうが断然重かったです。今回は、結末や事件の真相には触れずに感想をまとめてみます。

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『幻夏』のあらすじ

少女の失踪事件を捜査していた刑事・相馬は、現場に残された奇妙な印に目を留めます。それは、23年前の夏、行方不明になった親友の記憶につながるものでした。

少年時代の相馬にとって、水沢尚と弟の拓と過ごした夏は、かけがえのない時間でした。しかし、尚の家族は、父親が殺人犯とされた過去を抱えていました。子供たちの楽しい日々の傍らには、家族だけではどうにもできない事情があったのです。

そして台風が去った後、尚は川岸にランドセルを残して姿を消します。流木に残されていたのは、不思議な印。尚はどこへ行ってしまったのか。その印には、どんな意味があったのか。答えが分からないまま、23年の歳月が流れていました。

現在の少女失踪事件を追う中で、相馬は再び、あの夏に起きた出来事と向き合うことになります。今の事件と親友の失踪は、どう結び付いているのか。過去と現在をたどるうちに、やがて司法への信頼を揺るがす問題が浮かび上がってきます。

親友の失踪をめぐる謎と、冤罪によって変わってしまった家族の人生。少年たちの夏の記憶を織り交ぜながら、その背後にある真実に迫っていくミステリーです。

あらすじはKADOKAWA公式の作品紹介を参考にまとめています。

冤罪で狂ってしまった、家族の人生が切ない

この本で特に胸に残ったのは、少年時代の尚たちが置かれていた境遇でした。

相馬と尚、拓が過ごす夏の時間があるからこそ、その傍らにある家族の事情がつらく感じられました。子供たちにはどうすることもできない問題が、日常に影を落としているんですよね。

冤罪で奪われるのは、罪を着せられた本人の人生だけじゃないんですよね。家族の暮らしも、お互いを信じる気持ちも、その先にあったはずの未来も変わってしまう。

もし、あの出来事がなかったら。この家族には、全然違う人生があったんじゃないか。そう思うと、切なくて。

後になって真実が分かったとしても、それまでに失った時間や、壊れてしまった関係が全部戻ってくるわけではない。その取り返しのつかなさが、ずっと残りました。

それから、人の心が壊れていく様子を突きつけられたようで、本当にぞっとした場面もありました。怖さもあるんだけど、でも、すごく悲しかったです。どうしてここまで追い詰められなければならなかったんだろうと思うと、ただ怖いだけでは終われなくて。

『犯罪者』とは違う、真相が分かっても晴れない重さ

『犯罪者』には、パズルを解いていくような面白さがありました。色々な出来事がつながっていく感覚があって、重さはあるものの、人の想いや希望もちゃんと感じられたんですよね。

でも、『幻夏』は、救われなかったものが大きすぎて。

謎が解けたからすっきり、とはならないんです。何があったのか分かるほど、そこに至るまでの人生を考えてしまう。面白いから先は気になるんだけど、読み進めるのがつらいという、何とも言えない感じでした。

同じ作者の作品でも、読後に残るものはこんなに違うんだなと思いました。

最後に感じた、ほんの少しの希望

読み終わった時、強く残ったのは、やっぱり切なさでした。もう少し救いがあってほしかったなぁ、という気持ちもあります。

ただ、重苦しさだけが残ったわけではなくて。私は最後に、ほんの少しだけ希望も感じました。

どこにそう感じたのかは、ぜひ読んで確かめてほしいです。読んだ人によっても、受け取り方が違うかもしれません。

それでも、全部が救われたとは思えない。その僅かな希望と、どうしても取り戻せないものの大きさが、両方残るラストでした。

プロローグとエピローグのつながりも良かった

内容の重さとは別に、作品としてすごく良いなと思ったのが、エピローグからプロローグにつながるような構成です。

最後まで読んで、冒頭とのつながりが見えてくる。その見せ方が本当に上手いなぁと思いました。

何がどうつながるのかは書かないでおきますが、物語の締めくくり方にも、センスというか、演出の素晴らしさを感じました。

1冊だけど、読むには少し気合がいる

『犯罪者』は上下巻ですが、『幻夏』は1冊です。

なので、量としては少ないんだけど、気軽に読めるかというと、そうでもなくて。内容がかなり重いので、私には読むのに時間がかかる1冊でした。

あんな

冤罪や不適切な取り調べの話は、ニュースで見かけることもありますよね。だから、物語の中だけのこととは思えなくて、色々と考えさせられました。

現在はどれくらい改善されているのか、詳しいことは分からないけれど、こういう問題によって人生が変わってしまう人がいる。そのことが、尚たちの姿を通して重く感じられました。

『犯罪者』が面白かった人には、こちらも読んでほしいです。ただ、同じような読後感を期待すると、かなり重く感じるかもしれません。

面白いのは間違いない。でも、ちょっと気合を入れないと読むのがつらいかも。

私にとっての『幻夏』は、そんな1冊でした。

そういえば、『犯罪者』はAmazon Prime Videoでドラマ化されています。『幻夏』も、そのうちドラマ化されるのかな~と、ちょっと期待しています。

あんな

映像で観たら、またかなり胸に来そうだけど……。あの夏の空気や、プロローグとエピローグのつながりがどう描かれるのか、いつか観てみたいです。

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